第98回(2019年度)全国高校サッカー選手権 決勝
2020.1.13 さいたまスタジアム
静岡学園 3−2 青森山田
得点者:(静)中谷2、加納
(青)藤原、武田(PK)
静岡県勢として、第86回大会(2007年度)の河合陽介らを擁した藤枝東以来、実に13年ぶりの決勝進出を果たした静岡学園。その相手は、前年度覇者で、U18プレミアリーグも制覇、今大会もダントツで優勝候補筆頭の王者・青森山田でした。この年の青森山田は、トップ下で攻撃の中心を担う浦和レッズ内定のキャプテンで10番・武田英寿、武田の後方で攻守のバランスを取る横浜FC内定の古宿理久、2年生にしてディフェンスの中心を担う藤原優大、そしてボランチながら大会4得点と飛ぶ鳥を落とす勢いのスーパールーキー・松木玖生と、各学年に傑出したタレントを擁し、この大会も要所で勝負強さを発揮して決勝まで勝ち進んできました。当然ながら決勝も青森山田が圧倒的に優位という下馬評でした。
さいたまスタジアムでの選手権決勝史上最多の56,025人が詰めかけた試合は序盤、両サイドの小山、松村が仕掛けを見せる悪くない入りに見えましたが、青森山田は集中した守備で好機を作らせません。すると前半11分、青森山田の左サイド深い位置からのフリーキックを、センターバックの藤原が難しい体制から頭で上手く合わせ、最初のシュートでいきなり先制。静岡学園は今大会初失点を喫します。
ここからは青森山田の圧倒的なインテンシティの高さによるプレスで、静岡学園らしいサッカーが全くできない時間帯が続きます。そして青森山田は32分、左サイドからのスルーパスに武田が縦抜けしたところに、静岡学園のGK・野知が飛び出しますが、武田の方が一瞬早くボールに触りPKを獲得。これを武田が自ら冷静に沈め2−0とし、試合内容からも青森山田の圧勝の雰囲気がピッチを覆いました。
しかし静岡学園は前半ロスタイム、右サイドでフリーキックを獲得すると、井堀のクロスからキャプテン・阿部と相手ディフェンスが交錯したこぼれ球に、DF・西谷がダイレクトで折り返し→青森山田ディフェンスがブロックしたところを、静岡学園のDF・中谷颯辰がコンパクトに右足を振り抜き、値千金となる1点を返します。
1−2で前半を終了したハーフタイム、静岡学園の川口監督からは「受け身に回るな」と、青森山田の強烈なプレスに対してパスを受けるのを怖がっているように見えた、学園の選手達の消極的な姿勢に喝を入れます。
この「静学のサッカーができなければ意味がない。怖がるな。」という川口監督の檄により、後半は静岡学園らしさを取り戻します。テンポの良い繋ぎが戻り、徐々に青森山田のゴールに迫ると後半16分、左サイドで西谷ー草柳と繋いで今大会初先発のFW・加納がペナルティボックスライン付近でゴールに背を向けた状態でボールを受けると、流れるようなターンから左足を一閃。驚異的な腰の強さから逆サイドのエグいコースにシュートを叩き込み、同点に追いつきます。
このスーパーゴールに青森山田の選手達はかなりのダメージを受けていた様子で、一気に静岡学園ペースになるかと思われましたが、百戦錬磨の青森山田は上手く時間を使って試合を落ち着かせ、一進一退の攻防が続きます。後半35分には、青森山田が左サイドの抜け出しからゴール前に絶妙な折り返し。これに途中出場のMF・安斎颯馬が合わせますが、静学の中谷が素晴らしい反応でシュートブロックに入り、ゴールを許しません。
そして静岡学園は後半39分、コーナーキックのクリアボールを拾った左サイドの小山がフェイントで1人かわし、2人目をかわしたところでファウルをもらい、フリーキックを得ます。キッカーの井堀が綺麗な甲を描くクロスをファーサイドに上げると、ボールは吸い込まれるように中谷のところへ。これを完全にフリーとなっていた中谷がドンピシャのタイミングで合わせ、静岡学園が待望の勝ち越しゴールを挙げます。
追い込まれた青森山田は、ロングスロワーの鈴木琉聖を入れ、さらにはこの試合静岡学園に完全に封じられていた松木に代えて長身FW・金賢祐を入れて最後の猛攻を仕掛けます。後半45分には、鈴木の驚異的なロングスローからヘディングで擦らしたところをダイレクトで合わされますが、GK・野知ががっちり掴みます。なりふり構わず怒涛の攻撃を仕掛ける青森山田に対し、静岡学園はロスタイムに入っても不必要なロングボールを蹴ることなく、ドリブルとショートパスで時間を使って守り切り、3−2のままタイムアップ。高校サッカー選手権史上に残る名勝負は、静岡学園の劇的な逆転勝利で決着が着き、静岡学園としても県勢としても24年ぶり、そして静岡学園にとっては単独としては初となる悲願の全国優勝を果たしました。
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